授業風景
「舞台芸術基礎実習 Part 1(俳優・照明・舞台監督編)」の授業を紹介します
この実習では、理論の講義やコミュニケーション系の演習、各種ワークショップ演習の学びを、舞台芸術作品の実際の創作活動を通して、応用・検証します。プロの演出家やスタッフの指導のもと学生はキャストやダンサー・パフォーマーとして舞台に立ち、制作や舞台美術・照明・音響といったスタッフワークを担うことで、舞台芸術についての体験的学習を通して技術と知識を包括的に修得します。
授業の最終回には教員が舞台用に構成した宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシュ」の上演を行います。その試演会に向けて俳優・舞台監督・舞台美術・音響・照明・衣装・制作について学びながら同時に制作も行います。本日ご紹介するのは、俳優・照明・舞台監督の実習の様子です。
【俳優編@劇場】
俳優の実務家教員・山内健司講師から、自身が舞台に立つ前のルーティンの紹介がありました。「舞台に立つ者にとって何よりも身体作りが大事」ということで、舞台の前にはジョギング、ストレッチ、筋トレ、発声練習を必ず行うそうです。これらを行うことで舞台に臨む身体と気持ちを作るそうです。
また、俳優の仕事に関して「役を演じるうえで一番難しいのは、自分自身が長年経験したり感じてきた社会の常識を脱ぎ捨てること。それらを脱ぎ捨てないと自分ではない他人を解釈し演じることはできない」というお話がありました。
この日の授業では、実際に教員の本番前ルーティンを学生達も行ってみました。まずはジョギングからです。出発前に大学前の広場でしっかりとストレッチをします。大学近くの神武山(じんむさん)まで教員を先頭にジョギングをしました。教員からは、自分のペースで走ること、疲れたら歩いてもいいので、とにかく無理をせずに自分で調節するようにと指示がありました。
ジョギング後、スタジオでストレッチと発声を行いました。基本的なストレッチから始まり、徐々に発声を意識したストレッチへとうつっていきます。顔の筋肉をほぐすストレッチでは、右側から強風が吹いた時の顔や全てを中心に寄せる顔など、普段使わない顔の筋肉を動かしました。
【照明編@スタジオ】
スタジオでは照明の実習が行われていました。フリー照明家の生田さんとNPO法人プラッツの藤原さんにゲストスピーカーとして来ていただいています。生田さんは2012年から2021年まで鳥の劇場にて技術監督や照明を担当されておりとても経験豊富な方です。
照明の仕込み図は楽器の譜面と似ていて、初見でもこれさえ見れば照明を仕込むことができるそうです。しかし、この図をもとに仕込んだら全員が同じ明かりを出せるのか?というと、似たところもあれば違うところもでてきて、全く同じ明かりにはならないそうです。
また、仕込み図は記録として残しておくことが多いため、どんな大きさの会場で、どんな機材があるか、電源はどこかなどを詳しく記載しておくと良いとの話がありました。
照明を使った転換のお話もありました。お芝居を見ている時は観客の脳はさまざまな情報を処理するためにフル回転している状態で、それが暗転などでふっと視覚情報が途切れてしまうと脳が関係のないこと(この後何食べよう?など)を考え始めて観客が作品から離れてしまうことがあります。それを避けるためにも、各場面の転換の仕方をしっかりと考える必要があるそうです。
【舞台監督@大道具制作室】
大道具制作室では舞台監督の実習が行われていました。ゲストスピーカーの大鹿さんは舞台監督として、演劇、ダンス、インスタレーションなど、ジャンルを越えて幅広く活動を展開されていて、京都を拠点に国内はもとより海外でも多数活躍されています。
舞台監督として経験されてきた中から、スケジューリングについてお話しされていました。スケジュールを「逆算」することが大事だそうです。日常でスケジュールを決める時にもほとんどの人が「逆算」していると思いますが、多少のズレは生じていることと思います。その「ズレ」を修正する期間も計算してスケジュールを立てないと、ゴタゴタのまま公演初日を迎えることになるそうです。
スケジューリングのポイントとして、
・ゴールを設定すること
・公演日、劇場入り等、決定しているスケジュール日程を挙げること
の2点が最初に挙げられていました。
このことを踏まえ、実際に学生たちもスケジュールを立てていきます。今回は舞台公演のスケジュールではなく、架空の『豊岡おすすめスポット巡り』のスケジュールを立てました。決められた予算・時間の中でどう楽しんでもらえるか、対象者の趣向に合っているか、実際の移動距離と体力はもつかどうか等も含めて、楽しみながら考えているようでした。
講義中は、舞台監督をされた経験から、劇場入り初日に必要なこと・本学実務家教員と実際に舞台をつくった時の話など、 様々な貴重なお話を聞くことができました。