授業風景
『美学』の授業を紹介します
この講義では、「美学=感性学エステティック」を単なる知識の学習のみならず、五感を用いる「美」の経験とその知的理解として会得できるようになることを目的としています。
前回までに学修したことから、美しさを生み出す条件としての「フレーム」について例を挙げながら振り返り、再確認しつつ、今回の『自分を感じる』という講義内容に触れていきました。
美を生み出す「フレーム」とは、例えば、A4一枚の紙です。
A4の紙に、草花を採取して思い思いに並べていきます。この空間的「フレーム」におさめると、日常では意識していなかった細部が際立ち、草花が美しく見えてきます。
また、ジョン・ケージの『4分33秒』を演奏した時は、日常に埋没していた雑音が「4分33秒」という時間の「フレーム」の内で聞こえてくると、ある種の美しさを醸しだすこともあるそうです。
美を生み出す社会的・建築的「フレーム」は、日本でいえばたとえば「茶室」であり、西洋でいえば「美術館やコンサートホール」でもあります。日常生活のすぐ近くに非日常をつくる日本、離れたところに非日常をつくる西洋と比べながら、学生たちはその非日常の作り方の違いを感得していたようでした。
次に、日本の藝能・藝道の「フレーム」として「型」に注目しました。
たとえば、茶道では、「歩く」や「飲む」や「食べる」など日常的にプログラム化され必然化された動作を、「型」として「超プログラム化」「超必然化」することによって、そこに生じる「自然」の現象――湯気のゆらめき、陽射しのたわむれ、鳥のさえずりなどの偶然性が、いわば「超偶然化」されて際立つ。そこにこそ、客や主人は「美」を見出すそうです。
「茶禅一味」という言葉がありますが、茶道の根本には禅宗、坐禅があるそうです。藝道の「型」は単に動作の「フレーム」というだけでなく、それに繰り返し入り込む心身の状態を日常から非日常に変容させる精神的なフレームでもあるそうです。その心身の変容を実際に体験してもらうために、坐禅を行いました。ただ、教室なので、床に直に「坐る」わけにはいかないので、椅子に「座り」、「座禅」を行いました。椅子に深く腰を掛け、背筋を伸ばし、自分の呼吸に集中しながら、20分ほどでしょうか、座禅をしました。
その後、座禅中に感じたことをグループで話し合い、共有していました。
この後、日本の美と西洋の美の違いも学びました。茶道のように、日本の伝統的な美は、多くを禅に負っているのに比べ、西洋の伝統的な美は、キリスト教に深く根づくようです。その美の背後には、十字架に磔刑にされたキリストの「受難」があるとのことでした。