こまいちゃん
第98回-①:学生BLOG【二人三記】「墨色の翼」
二人で書く芸観大生日記、二人三記です。
寮の前には線路があり、よく電車がとまっています。
夜、月と星と街頭で仄かに照らされた電車は、忙しない時間の中でのひとやすみを感じさせます。
しんとしたまちと、星と、夜の匂いとキンとした空気、とまった電車。
豊岡の美しい光景を、ようやく見つめることができるようになりました。
みなさんお久しぶりです。こまいちゃんです。
恐らくローテーション的にこれが私の最後のブログになります。
思えば1年、長かったようで短かったです。
春ははじまりの季節。
個性豊かすぎる同室と出会って、但馬観光をして、はじめてのバイトに行きました。
同室の出身地はバラバラで言葉や文化が少しづつ違い、毎日が新鮮でした。はじめてのバイトは毎回ミスをして、確立されているコミュニティに溶け込めるか不安でした。履修登録は分からないし、サークルの数は多すぎるし、何気にはじめての一人暮らし(仮)だし。
だけど、本当に毎日が楽しかったです。
だって念願の大学生。
私は受験でかなり苦労したので、「大学生である」ということの感動が人一倍だったのかもしれません。
夏は挑戦の季節。
なつおと、キャンプ場実習、オープンキャンパスに豊岡演劇祭。
なつおと、というのは音楽サークルなまおとの夏イベントです。先輩方に混じって好きな音楽を思う存分楽しみました。ベースとピアノが私の相棒です。青春を想像するときそのままのような光景と音楽がきらめいていました。照明も音響も知識と技術を身につけた学生が担当し、自主的に作り上げるってこういうことか!と思いました。キャンプ場実習ははじめての臨地実習。仕入れから値段まで自分たちで決めるジュース販売や、初日にみんなで食べた山盛りバーベキューは思い出深いです。オープンキャンパスでは、未来の4期生に学内案内をしました。かつての私を見ているようで、とても懐かしい気持ちになったのを覚えています。
秋は苦労の季節。
ある程度全員が知り合いになってきて、自分と周りの違いに悩んだり、ひとりになれる場所を求めたりしていました。一度、どうしても我慢できなくなって、土曜日に思い立ったまま電車に乗り豊岡から離れたことがあります。何が嫌になったのか、具体的な原因は今でも分かりません。ただ電車に揺られているとき、優しいバラードを聴いて胸が苦しくなりました。逃げているからです。優しい言葉を聴く資格もないだろうと自嘲する度に、更に自己嫌悪に陥りました。私は基本的に自己愛強めなほうなのですが、このときばかりは落ち込んでいました。逃げることは悪いことではないと知ったのはもう少し後のことです。防衛はしっかりするべきであって、今ではこの行動をして良かったなと思っています。自分の敵はいつも自分ですが、自分の1番の理解者で味方なのも、結局は自分なのです。
そして冬。成長の季節。
私は今空港にいます。1年生最後の臨地実習です。
空港では色々なことを学びます。毎日が勉強と発見の連続で、本当に楽しいです。
内容は詳しく言えないので、あなたの想像におまかせしますが。とにかく沢山の人が出入りし、遠い地と連絡を続けている様子を毎日見ています。
そしてここで長い間過ごして思うのは、世界はここだけではないということです。
あまり上手く言えないのですが、飛んでいく飛行機に手を降っていると豊岡の外との糸のようなものが見える気がするのです。周りに何もない滑走路で、橙と青が緩やかなグラデーションをつくる夕方の空に薄い月が浮かんでいる。そしてそこに向かってまっすぐに飛んでいく飛行機が、濃い影となって雲に隠れていく。
綺麗でたまらない光景です。
そして、豊岡の翼が外へ羽ばたいていく光景です。
豊岡のような土地で過ごしていると、閉鎖的だなと感じることが少なからずあります。しかしそれは、自分がまだ外との繋がりを見つけていないからなのかなと思うようになりました。飛んでいく飛行機のように、扉はいたるところに存在し、豊岡からうまれた糸は色々なところで結ばれています。その糸を辿れば、きっと更に広い世界が広がっていて。私達の心をどこまでも連れて行ってくれるのでしょう。
そして、そうやって様々な世界を見たあと、とまった電車の美しさに気づくのだと思います。
結局、何もかも自分次第、考え方次第なのです。
選ばれた舞台。選んできた演出、手には手書きの台本とボールペン。決められた場所をどう捉えて、そこでいかにして私を見失わないか。どう成長していくか。
自分で決めて自分で動いて自分で結果をだしていくことは楽しくて仕方がないです。扉があればのぞけばいいし、疲れたらとまった電車に乗って、優しいバラードを聴きながら眠ることも大切です。
私はそうやって、少しづつ成長していきます。
さて、飛行機は金属の塊ですが、空を飛ぶことができます。改良と計算が重ね尽くされた羽は沢山の人を乗せ天高くのぼり、雲をも見下ろしてしまいます。
そして輝ける人もまた、強固な意志をもつままに成長を続け空を駆け抜けます。書き込まれて真っ黒になった羽は、しかし力強く美しく、自分を含み沢山の人を幸せにするのでしょう。
何層にもある雲の中。
進む先は晴天か曇天か。
しかし必ず、その先にあるものよ。
追うことをやめないために、私は自らの羽をこれからも育てていこうと思います。
この1年、そのための沢山の材料をもらいました。ですがまだまだ、まだまだです。
楽しい1年でした。実りある1年でした。
そしてこれからも、どんどん上回っていくでしょう。
空を飛ぶのが楽しみです。
それではみなさま、いつかまた会いましょう!
ブログ担当者:こまいちゃん