外塗り内服薬
第81回-②:学生BLOG【二人三記】「733キロぐらい」
二人で書く芸観大生日記、二人三記です。
言葉を使うというのは難しくも楽しい営みだなあと思う毎日です。
私の暮らす部屋に韓国から留学生が来てくれました(以下、Koreaの頭文字をとってKさんとします)。毎日、大きな刺激の中で学生生活を送っています。
今回のブログはKさんとの出会いによって考えた言葉の難しさのお話です。
留学生と生活するCATならではの経験の紹介と受験の話もちょっぴりしたいと思っております。
Kさんはとても日本語が上手で、日常会話は問題なくすることができます。これにはとても驚きましたし、なんだか嬉しかったです。
初日から緊張していたのはもともと寮にいた私たちだけだったようで、Kさんは進んで私たちに話しかけてくれました。おかげですぐに仲良くなり、ジャパニーズカルチャーのすき家を食べながら「家族みたいですね!」と言われるまでになりました。
前まで3人で仲良く暮らしていた私たちは、4人になることに少なからず恐怖がありましたが、今ではKさんも大切な私”たち”です。
Kさんがはじめて寮に来た日、生活必需品を求めて一緒に買い物に行きました。その帰り道、どんな理由でKさんが大学に来たのか尋ねると、一番に学長の平田オリザさんの名前が出ました。
「韓国でも、日本の演劇をよく見た。」
「その時に、オリザさんの名前を、、、」
と、ここまでKさんが話してくれた時、少しKさんの言葉が詰まりました。
私が、
「(オリザさんの)名前が、”よく出る”?」
と聞くと
「”よく出る”!そう言うんですね!」
と、とても嬉しそうに返してくれました。
「名前が出る」という表現は日本語話者の会話の中ではよく使われるものですが、海外の方が日本語を勉強する時、どのくらいの難易度の表現として学ぶのでしょうか。
Kさんと一緒に生活しているとこんなふうに日本語の難易度について考えることが毎時起こります。今自分が使った、あるいは使おうとしている日本語が、相手にとって聞きやすいものか、伝わりやすいものか考えながら話すこともあります。すごく楽しくて、勉強になる時間です。それに、誰かに言葉を届けるために一考するというのは演劇的だなーとも思います。
そして同時に、自分がKさんに対してどのような言葉を使っているのか、とても考えさせられます。
Kさんは私よりも5つ歳上、人生の先輩です。演劇に関しても経験値の差は歴然で、その話題になるといつも新しい知識を授けてくれます。しかしながら、私とKさんで日常会話をする時、自分よりも年齢が低い人と話しているときのような言葉遣いをしている自分に気づくことがあります。私が話す日本語が伝わらないことの恐怖心からこのような言葉遣いになるのだろうと考えますが、Kさんの立場になってみると知らない単語にたくさん出会えるほうが留学の価値がある、とも言えると思います。
また、無意識で使う同音異義語がKさんにとってはすごく難しかったりすることがあります。
例えば「かじ」という単語。
家事、火事、舵、鍛冶とすぐに思いつく限りで4つも異義があります。これを音と文脈だけで判断する日本語って難しい。
改めて考えるとこのような言葉の難しさや自分の無意識に気付けるのですが、私たちは多分、言葉を発するときに様々な環境を無意識に加味した上でそれが形になっているのだと思います。すごく不思議なことだと感じます。
留学生と一緒に暮らすと、文化、習慣の違いに気づくのはもちろん自身に訪れた変化に気づくことができます。また、その発見から新たな発見へ、そして学びを得ることができます。国を知り、中身を知り、違いを知り、似ていることを知り、そして人を知る。
CATにはこんなふうに、他の大学ではなかなかできない体験が待っています。CATにもKさんにも感謝しかありません。刺激でいっぱいの毎日です。
今、このブログを読みながらワクワクしつつも大きすぎる不安の渦中にいる受験生がいるかもしれません。しんどくてつらい時間だと思います。でもさっき書いたようにその不安な気持ちや悩んだ時間は必ずあなたの体から言葉となって発話されます。そしてそれはきっと志望理由書や小論文、面接などの言葉をもろに使った課題であなたの助けになってくれます。
私も受験期、たくさん悩みました。不安でいっぱいで、意味もなく頭に浮かんだ言葉をノートに書き殴っては黒鉛で真っ黒になった手に虚しさを覚えたり。
たくさん悩むからこそあなただけの文脈を持った言葉が文字になり、音になり、思いになって試験官や面接官に届くと思います。
だから恐れず、たくさん悩んでください。悩みは武器になります。
学生ブログももちろん、言葉を使った作品です。
私の持つ、CATの楽しさや留学生と一緒に生活する楽しさは届いているでしょうか。
他の学生ブログ執筆者の持つ、それぞれの思いは届いているでしょうか。
受験生の方々はぜひあなたの思いを私たちにも試験官にも届けてあげてください。
一回目の試験日が近づいて来ました。私も昨年の緊張を思い出しながら新しい仲間の訪れにワクワクしています。
身体だけでなく心の調子にも気を使ってあげながらたくさん悩んで、受験生の皆さんが満足のいく受験期間を過ごされることを願っております。
では、ここらで本ブログの文字数に。Kさんが国へ帰ってもまた日本に来てくれるように願いを込めて。
ご精読いただきありがとうございました!
ブログ担当者:外塗り内服薬